急性骨髄性白血病の新しい治療薬Mylotargについて

再発性・難治性骨髄性白血病の治療薬のMylotarg (Gemtuzumab Ozogamicin)についての解説です。
日本では未認可ですが、認可されている米国から個人輸入で使用が可能ですので紹介しています。
掲載内容はhttp://www.fda.gov/cder/foi/label/2000/21174lbl.pdf からの抜粋ですので、詳細はオリジナルを参照して下さい。

Mylotarg とは:

Mylotarg は商品名であり、一般名はgemtuzumab ozogamicinといい、遺伝子組み換えによって作成した抗CD33ヒト型抗体(IgG4, κ)にcalicheamicinという抗腫瘍抗生物質を結合させて作成した注射用抗癌剤です。

Mylotargの抗体部分はCD33という抗原に対する抗体です。CD33というのは、白血病の骨髄芽球や未成熟の骨髄細胞の細胞膜に存在する接着蛋白で、正常の造血幹細胞には存在しません。Mylotargに含まれる抗体はマウス細胞で作成した抗CD33抗体をヒト型に改変したもので、98.3%はヒト型のアミノ酸配列と一致しています。

このヒト型抗CD33抗体をN-acetyl-gamma calichemicinと結合させたものがGemtuzumab ozogamicin(Mylotarg)で、Gemtuzumab ozogamicinの約50%は抗体1分子当たり4〜6分子のcalicheamicinと結合しており、残りの50%の抗体はcalicheamicinと結合していません。Gemtuzumab ozogamicinは分子量が151〜153 kDaです。

Mylotargは20mlのvialの中に5mgのGemtuzumab ozogamicinを含みます。この薬品は光に当たると劣化するので、薬を溶かすときや点滴で投与するときは、日光(直接と間接とも)や遮蔽されていない蛍光に当たらないようにしなければなりません。その他の成分として、デキストラン40、スークロース(Sucrose)塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムを含みます。

Gemtuzumab ozogamicinはCD33抗原に結合します。この抗原は急性骨髄性白血病の80%以上の患者の白血病細胞の細胞膜に発現しています。CD33は正常の骨髄細胞にも発現していますが、多機能性造血幹細胞や非造血性細胞には発現していません。

Mylotargの抗体部分が白血病細胞のCD33と結合すると、細胞内に取り込まれます。細胞内に入り込まれると、白血病細胞のライソゾームの消化酵素によって、抗癌活性を持ったcalicheamicin部分が遊離します。このフリーになったcalicheamicinがDNAと結合してDNAを切断し細胞死を引き起こします。したがって、CD33陽性の白血病に対して抗腫瘍効果を発揮できます。

正常の骨髄細胞もCD33抗原を発現しているため、Mylotargの投与は骨髄細胞を障害して強い骨髄抑制を引き起こします。しかし、多機能性造血幹細胞は障害を免れるため、mylotargによる骨髄抑制は回復可能です。

臨床薬理:

gemtuzumab ozogamicinを推奨量の体表面積1 m2当たり9 mgを2時間の点滴で投与すると、全calicheamicinと非結合型のcalicheamicinの排泄の半減期はそれぞれ45時間と100時間でした。2回目の9 mg/m2投与後は、全calicheamicinの半減期は60時間に延長していました。Mylotargの処方について:

非結合型のcalicheamicinの半減期には、1回目と2回目で差は認めませんでした。

臨床試験:

Mylotarg投与の有効性と安全性が、CD33陽性の急性骨髄性白血病の初回再燃症例の142例において検討されています。
Mylotargは9 mg/m2で14日間隔で2回投与され、2回目投与のあと28日間経過観察が行われました。
9 mg/m2という投与量は、白血病細胞の量にかかわらず全てのCD33抗原と結合することが期待できる量です。
Mylotargを投与する前に、副作用を軽減する目的で、アセトアミノフェン650〜1000 mgとジフェンヒドラミン50 mgを内服させます。
末梢血から白血病細胞(ブラスト)が消失する完全緩解したのは約30%(42/142)で、再燃までの平均期間は60日でした。142例の平均生存期間は5.9ヶ月で、142例中56例は臨床試験の期間中生存しました。

適応と用法:

MylotargはCD33陽性の急性骨髄性白血病患者(60歳以上)で初回の再燃例で、細胞毒性の強い抗癌剤の適応にならない症例に適用されます。
全身状態が悪い場合や、臓器機能が低下している場合のMylotargの安全性や有効性は確立されていません。
Mylotargの有効性はその寛解率に基づいており、症状の改善や延命効果などの臨床的な有効性があるかどうかの結果は出ていません。

禁忌:

gemtuzumab ozogamicinやその他の成分(抗CD33抗体、calicheamicin代謝産物、カプセル内の非活性成分など)に過敏性を有する人には投与は出来ません。

警告:

Mylotargは抗癌剤治療に経験のある医師の管理下で使用して下さい。
推奨された用量のMylotargを投与された全ての患者に著明な骨髄抑制が起こります。
注意深い血液検査の観察が必要です。感染症に対する治療が必要です。
Mylotarg注射後に、発熱悪寒が起こり、時には血圧低下呼吸困難が投与24時間くらいまでの間に起こります。その他に、場合によっては、血圧上昇、高血糖、低酸素血症などがおこります。
これらの副作用を予防するために、次のような薬を使用します。
diphenhyramine 50 mgとacetaminophen 650〜1000 mgをMylotarg注射の前に内服し、acetaminophen 650〜1000 mgは必要に応じて4時間間隔で2回服用します。点滴中と投与終了後4時間はバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸状態など)をチェックしておかなければなりません。

注意:

点滴で2時間かけて注射します。決して短時間で注入してはいけません。
投与は癌の化学療法に慣れた医師の管理下で行うべきです。
白血病細胞が大量に死ぬときにtumor lysis syndrom(腫瘍融解症候群)が発生しますので、高尿酸血症を防ぐために適切な手段(水分摂取やallopurinol内服)が必要です。
Mylotarg治療中は電解質、肝機能、血球数などの注意深いチェックが必要です。

急性の副作用:

再発した急性骨髄性白血病患者142例にMylotargを9 mg/m2投与(14日間隔で2回投与)した臨床試験での急性の副作用は以下のような結果でした。

悪寒(62%)、発熱(61%)、吐気(38%)、嘔吐(32%)、頭痛(12%)、血圧低下(11%)、血圧上昇(6%)、低酸素血症(6%)、呼吸困難(4%)、血糖上昇(2%)

これらの症状は通常、2時間の点滴の終了時ころに現れ、acetaminophenやdiphenhydramineや点滴などの治療によって2〜4時間で軽快します。
2回目の投与の時には、これらの副作用の頻度は減少しています。

自己抗体の出現:

gemtuzumab ozogamicinに対する自己抗体の出現はフェ−ス2試験における142例の患者の中には認められていません。
フェ−ス1試験では、gemtuzumab ozogamicinのcalicheamicinとリンカー部分に対する抗体活性の上昇が、3回投与後に2例において認められました。1例は一過性の発熱、血圧低下、呼吸困難が出現しましたが、他の1例では症状は見られませんでした。Mylotargの抗CD33抗体部分に対する自己抗体の出現はみられませんでした。

骨髄抑制について:

Mylotargの最も重大な毒性は高度の骨髄抑制です。臨床試験の結果では、Grade3-4の好中球減少が137/140(98%)に発生しています。最初の投与の後、好中球が500/μlに回復するまでの平均期間は40.5日でした。

Grade3-4の血小板減少は139/141例(98%)に発生しています。最初の投与の後、血小板数が25000/μlに回復するまでの平均期間は39日でした。

Grade3-4の貧血は66/141例(47%)に発生しています。

以上に対して、多くの症例で輸血が行われています。

感染症について:

Mylotarg治療中には日和見感染を含めてGrade 3-4の感染症が40/142例(28%)に発症しています。頻度の多い重症感染症は敗血症(16%)と肺炎(7%)です。Herpes simplex感染は22%に発生しています。

出血について:

Mylotarg治療中にGrade 3-4の出血が21/142例(15%)にみられました。最も多いのは鼻出血(3%)で、その他に脳内出血(2%)、播種性血管内凝固症候群(2%)、頭蓋内出血(2%)、血尿(1%)でした。

その他の副作用:

口内炎胃炎は50/142例(35%)にみられています。Grade 3-4の高度の口内炎・胃炎は5/142例(4%)にみられ、残りの45/142例(32%)はGrade 1-2でした。

肝機能障害は多くの場合、一過性で回復可能でした。臨床試験では、33/141例(23%)でGrade 3-4の高ビリルビン血症が出現しました。
Grade 3-4のALT異常は12/141例(9%)に、Grade 3-4のAST異常は24/141例(17%)にみられました。トランスアミナーゼ(ALT, AST)とビリルビンがともに異常値をきたしたのは13例にみられました。

腫瘍融解症候群(Tumor lysis syndrome)と多臓器不全による肝機能低下によってMylotarg投与後22日目に死亡した症例が1例ありました。
さらにもう1例は、治療後156日目に持続する黄疸と肝脾腫をきたして死亡しました。
Mylotarg治療後に造血幹細胞移植を受けた27例中、4例が肝静脈閉塞症(hepatic veno-occlusive disease)で死亡しました。

脱毛の副作用はみられませんでした。
発疹は22%の症例に出現しました。

5例がMylotargで1コース以上の治療を9 mg/m2で受けましたが、副作用の内容は初回のものと同様でした。

過剰投与:

Mylotargの過剰投与の臨床例は報告されていません。成人で9 mg/m2以上の投与は検討されていません。
ラットを用いた実験では2 mg/kg(mg/m2の計算ではヒトにおける推奨投与量の1.3倍)が致死量であり、雄サルを用いた実験では4.5 mg/kg(mg/m2の計算ではヒトにおける推奨投与量の約6倍)が致死量でした。

Mylotargの過剰投与の場合の徴候は知られていません。
過剰投与の場合には、一般的な対症治療が必要で、血圧や血球数の注意深いモニターが必要です。Gemtuzumab ozogamicinは透析では除去できません。

用量と投与法:

Mylotargは体表面積1 m2当たり9 mgを2時間かけて点滴で投与します。これを14日間隔で2回行うのが通常の治療法です。

この薬剤は光感受性(光に当たると劣化する)ですので、薬を溶かすときや点滴で投与するときは、日光(直接と間接とも)や遮蔽されていない蛍光に当たらないようにしなければなりません。

投与のための薬剤調製は、日光や蛍光の当たらない状況で、生物学的に安全なフードの中で行います。
薬剤を調製するときは、まず薬剤の入ったバイアルを室温にしばらくおいて、バイアルの温度が室温になるまで待ちます。
5 mlの注射用蒸留水でバイアルの中の薬剤を溶かします。バイアルをゆっくりと振りながら、十分に溶解したことを確かめます。この薬液は1 mg/mlの濃度であり、この状態に調製したMylotargは遮光して冷蔵庫(2 - 8℃)で保管すれば8時間までなら保存できます。

投与する量のMylotargを100 mlの注射用生理食塩水に注入します。この生理食塩水の入った点滴バッグは紫外線を遮断できるようにしておきます。このように調製した薬剤はできるだけ速やかに使用します。

通常の静脈注射のように短時間で注入することはできません。2時間かけて点滴で注入します。他の点滴とは独立したルートで、蛋白吸着率の低い1.2μフィルターを用いて注射します。末梢の血管からも中心静脈からも投与はできます。

副作用を予防するためにacetaminophenとdiphenhydramineを前投与します。
Mylotargを投与する1時間前にdiphenhydramine 50 mgとacetaminophen 650 - 1000 mgを内服します。(この投与量は成人用)必要な場合には、acetaminophenの650- 1000 mgを4時間おきに2回服用します。

点滴中と投与終了後4時間はバイタルサイン(血圧や脈拍や呼吸状態など)を注意深くモニターします。
14日後に2回目を投与する時は、骨髄抑制(血球数の減少)からの十分な回復は必須ではありません。
Mylotargは外来通院の状態で投与も可能です。

保存と取り扱い:

Mylotargは冷蔵(2〜8℃)で、遮光した状態で保存します。
蒸留水で溶解した後、注射に使用する前に、不溶物や変色をチェックします。点滴中は点滴バッグが紫外線から遮断できるようにします。

その他の注意事項:

○血中ビリルビン量が2 mg/dl以上の肝機能障害の患者ではMylotargの安全性は検討されていません。

○胎児に悪影響を及ぼす可能性があるので、妊娠中の患者には投与できません。

○他の薬物との相互作用についての公式の検討は行われていません。

○血液検査などのデータに影響するかどうかの検討も行われていません。

○長期の発癌性試験は行われていません。Mylotargの抗癌活性はcalicheamicinのDNA障害によって起こりますので、変異原性を有する可能性があります。

○Mylotargが母乳中に分泌されるかどうかは不明です。しかし、免疫グロブリンを含めて多くの薬剤が母乳中に分泌されますので、Mylotargが乳児に及ぼす悪影響を考慮すると、Mylotarg治療中は授乳を中止すべきです。

○小児におけるMylotargの安全性と有効性については検討が行われていません。

○腎機能に異常のある患者での使用に関しては検討がなされていません。