現代医学は、科学的合理的に割り切って、例えば、二重盲検試験で効果の再現性と普遍性がはっきり証明されなければ、その薬は治療に使用しないという立場に立ちます。大多数(例えば90%以上)の人に効果が現れるようなものでないと、科学的に根拠があるとは認められません。
一方、漢方治療は何らかの効果が期待できる可能性があれば、とにかく漢方薬を投与して治療してみようとします。この時の一つの考え方として、投与した薬の反応をみながら、薬や治療法を耐えず(遂時)修正していこうという方法があります。ただし、何の理論も根拠もなく薬を使うのではなく、「経験」という根拠に基づいて体系化された「理論」によって薬を選びます。
漢方の言葉に「同病異治」というのがありますが、同じ病気であっても、病人によって最も効果のある治療法は異なるということです。漢方の診断法により、合った治療法を絞り込むことはできますが、細かい修正は実際の治療を行なっているうちに行なうべきものと考えています。
現代医学は、病気に効く薬を探すのが大きな目的ですが、漢方医学では薬の使い方を追及するという態度が大きいといわれています。漢方に熟練した医師なら、証を目標として漢方処方を充分に使用できるはずですが、実際問題としては、その症状の組み合わせや、その条件、使用目標などは、各学派や個人によって異なり、明確に一致していないことが多いのも事実です。したがって、医師の主観や経験による部分が大きいために、診断、治療の成否が不安定であり、効果判定もはっきりしない欠点があります。実際の治療としては、試行錯誤を繰り返して、ぴったりと適応した薬方を探していることのほうが多いのが実情なのです。
かなり曖昧な治療法と捉えることもできますが、生体の反応が理論的に予測できないことの方が多く、投与した薬の反応をみながらより合った薬を探していくという試行錯誤のアプローチは、理論医学では受け入れられませんが、実地医療では有効なことが多いといえます。その薬が、同じ病気の人の10%にしか効果のないものでも、効いた人にとっては有効や治療法となるのです。