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漢方薬+COX-2阻害剤(celecoxib)+メラトニン+IP-6 & Inositol(IP-6イノセル)
を併用した抗腫瘍免疫力の増強法

【はじめに】

がん細胞に対する免疫力を高める様々な方法が行われていますが、効果や費用の面から一長一短があります。
活性化リンパ球療法がんワクチン療法樹状細胞療法は先端医療として実施されていますが、まだ研究段階であり、費用が高額である割に有効性に関してはまだ十分に満足できる段階ではありません。
キノコなどに含まれるβグルカンなどの多糖類を利用した健康食品が、免疫力を高めてがん細胞の増殖を抑えるという宣伝文句で販売されています。動物実験ではある程度の抗腫瘍効果が認められていますが、人間での有効性については、極めて限定的であると言わざるを得ません。
比較的高額な商品も販売されていますが、高額なものがより効くという保証はありません。誇大広告が多く、人間での効果が証明されていない商品が不当に高額な価格で販売されているものも多くあります。

免疫細胞を刺激するだけでは十分な効果を得ることはできません。栄養状態や血液循環や諸臓器の働きが悪ければ、いくらがんワクチン療法や樹状細胞療法や健康食品などで免疫細胞を刺激しても、十分に免疫力を高めることができません。
免疫細胞を活性化する効果と同時に、胃腸の働きを良くして栄養状態を高め、血液循環や新陳代謝を良くして免疫力が高まる体の状態にすることも重要です
抗腫瘍免疫の活性化を妨げている要因を取り除く治療も必要です。がん細胞が正常細胞とは異なる抗原を有している場合は、免疫学的には宿主のT細胞によって拒絶されるはずです。しかし、免疫監視機構からの逃避(免疫寛容)の機序によって、がん細胞は増殖を続けています。この免疫寛容の状態を軽減する方法も、がんに対する免疫力を高める上で重要です

がん細胞に対する免疫力を高める方法として、当クリニックでは、漢方薬COX-2阻害剤のcelecoxib(商品名:セレブレックスまたはセレコックス)とメラトニンIP-6 & Inoshitol(イノセル)の4つを組み合わせた方法を実践しています。進行がんの代替医療や抗がん剤治療中の補完医療として、理論的に効果が期待できる組み合わせです。費用は1ヶ月分が35000円〜50000円程度で(漢方薬の処方内容や、服用量に応じて価格が変わります)、費用対効果の観点からも、試してみる価値がある方法です。

【治療法の概略と根拠】

1)漢方薬は免疫細胞を活性化すると同時に、免疫力が高まる体の状態に調整する:

生薬に含まれるβグルカンサポニン精油成分の組み合わせによって、漢方薬の免疫増強効果を相乗的に高めることができます。
βグルカンの豊富な鹿角霊芝(ろっかくれいし)・梅寄生(ばいきせい)・茯苓(ぶくりょう)・猪苓(ちょれい)、サポニンの豊富な高麗人参(こうらいにんじん)・田七人参(でんしちにんじん)・党参(とうじん)・黄耆(おうぎ)、精油成分の豊富な当帰(とうき)・川きゅう(せんきゅう)・鬱金(うこん)・莪朮(がじゅつ)などを組み合わせると、免疫増強効果を相乗的に高めることができます。
これらを組み合わせることは、免疫細胞の活性化だけでなく、胃腸の状態を良くし、組織の血液循環を良くすることによって、免疫力が高まりやすい体の状態に整えます
漢方薬は煎じ薬で、その処方はがんの進行度や治療の状況や症状などに応じて、オーダーメイドに処方を決めます。



2) COX-2阻害剤のcelecoxibは免疫を抑制している要因とがんを悪化させる要因を取り除く:

シクロオキシガナーゼ-2(COX-2)阻害薬は抗腫瘍免疫を増強し、炎症反応によるがんの進展を抑制します。
COX-2は炎症細胞(マクロファージなど)やがん細胞が産生する酵素です。COX-2により産生されるプロスタグランジンE2(PGE2)は、リンパ球の活性化や増殖を抑え、リンパ球によるサイトカインの産生を抑制する作用があり、さらに、腫瘍血管の新生やがん細胞の増殖を促進します。
したがって、PGE2の産生を抑えるCOX-2阻害剤は、腫瘍組織における免疫細胞の活性や増殖を高め、がん細胞の増殖を抑える効果があります
免疫抑制作用(免疫寛容)の成立において重要な役割を果たしているインドールアミン酸素添加酵素(IDO)の作用をCOX-2阻害剤のcelecoxib(商品名:セレブレックス、セレコックス)が阻害して、がん細胞に対する免疫寛容を解除し、がんに対する免疫力を高めることが報告されています。
COX-2阻害剤は、炎症反応を抑えることによってがん細胞の悪性進展を抑制する効果もあります。

図:がん組織の中のがん細胞や炎症細胞はCOX-2を大量に発現しており、COX-2の合成するプロスタグランジンE2は腫瘍血管新生・がん細胞の増殖刺激・抗腫瘍免疫の抑制などの作用によってがんを悪化させる。

3)メラトニンはリンパ球やナチュラルキラー細胞の活性を高める:

メラトニンは脳の松果体から放出される体内時計を調節するホルモンです。暗くなると体内のメラトニンの量が増えて眠りを誘います。快適な睡眠をもたらし、時差ぼけを解消するサプリメントとして評判になりましたが、免疫力と抗酸化力を高める効果や、直接的な抗がん作用などが報告されています

Tリンパ球や単球の表面にメラトニン受容体があり、メラトニンはこの受容体を介してリンパ球や単球を刺激して、インターフェロン-γ(IFN-γ)やインターロイキン(IL)1,2,6,12などの免疫反応を増強するサイトカイの分泌を促進する作用があります。
IL-2の産生によってナチュラルキラー細胞が活性化されます。
メラトニンはリンパ球内のグルタチオンの産生を増やしてリンパ球の働きを高める効果が報告されています。
メラトニンは免疫細胞を活性化するだけでなく、抗がん剤によるダメージからリンパ球や単球を保護する作用もあります
ストレスによる免疫力の低下を抑え、感染症に対する抵抗力を高める効果が、動物実験で示されています。臨床試験では、肺がんや大腸がんなどで、インターロイキン-2による免疫療法と併用して、抗腫瘍効果の増強が確認されています。
メラトニンは抗がん剤や放射線治療の副作用を軽減し、さらに抗がん剤や放射線による抗腫瘍効果を増強して生存率を高める効果が多くの臨床試験で報告されています
手術前後に服用すると、創傷治癒を早める効果や、免疫力を高めて感染症を予防する効果も報告されています。
末期がん患者に投与して、生存期間を延ばす効果が報告されています

図:メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計の調節、免疫力や抗酸化力の増強、抗がん作用などの効果があり、がん治療において様々な効果が報告されている。

4)IP-6 & Inositol(IP-6イノセル)はナチュラルキラー細胞を活性化する:

IP-6イノセルは米ぬか由来の天然成分IP-6(フィチン酸)とイノシトールをシャムスディン教授(米メリーランド大学医学部病理学)がもつ配合特許を元に作られたサプリメントです。
IP-6 (inositol hexaphosphate) はイノシトールという糖(炭水化物)に、リン(P)が6個結合した物質です。イノシトールは、糖アルコールの一種であり、細胞成長促進に不可欠なビタミンB群の一種として知られています。これらは穀物やマメ類に豊富に含まれています。
IP-6(フェチン酸)は天然抗酸化剤として利用されており体内においてもDNAを守るなど重要な役割を担っている成分です。活性酸素の害を抑え、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させて免疫力を高めるなどの働きがあることで注目されています。
IP-6の発がん抑制作用はイノシトールと一緒に取ることにより増強されることがシャムスディン教授のグループにより明らかになっています。
ナチュラルキラー細胞活性を高める効果の他、がん細胞の増殖を抑える効果や、がんの発生を予防する効果も報告されています

図:イノシトールはIP-6の骨格構造であり、リン原子が結合できる炭素原子を6個持っている。これらの6個の炭素原子が全てリン酸エステル化したものがIP-6(inositol hexaphosphate)。6個の炭素原子のうち3個のみがリン原子と結合したものがIP-3で、IP-3は細胞の増殖や細胞間コミュニケーションなどの重要な細胞機能を調節する中心的役割を果たしている。IP-6とイノシトールを4:1で投与した時にIP-3が効率的に産生され、強い抗がん活性を示す。

以上のことから、漢方薬とCOX-2阻害剤(セレコックス、セレブレックス)とメラトニンとIP-6イノセルを併用すると、がん細胞に対する免疫細胞の攻撃力を効果的に高めることができますそれぞれは免疫力増強作用だけでなく、がん細胞の増殖を直接抑える効果も持っています多くの基礎研究や臨床試験で、がん治療における有効性を示す結果が得られており、費用も比較的安価です。
1ヶ月分が、漢方薬(2〜3万円)、セレブレックス(9000〜18000円)、メラトニン(5000円)、イノセル(5250〜10500円)です。

抗腫瘍免疫を高めるための基礎知識

【体にはがん細胞を排除する免疫力が備わっている】

免疫」とは異物に対して攻撃を仕掛けて排除しようとする生体防御の要です。異物とは外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原菌のみならず、体内に生じたがん細胞も含まれます。がん細胞に対する免疫力を高めてがん細胞を排除しようという治療法ががんの免疫療法です。

免疫療法は、手術、化学療法、放射線療法に次ぐ第4のがん治療法として注目されています。
免疫系は様々なタイプの細胞から構成され、体の中では胸腺、脾臓、リンパ節、骨髄、小腸のパイエル板などに免疫細胞が集まって免疫組織を作っています。これらの免疫組織はリンパ管や血管と密接に連携して全身の至る所に網の目のようなネットワークを形成しています。免疫細胞は一般に白血球と呼ばれており、大きく分けて多核白血球(顆粒球)、リンパ球、マクロファージ(貪食細胞)に分けられ、これらがお互いに連携し役割を分担しながら、病原体やがん細胞を見つけては排除してくれます。
リンパ球の中のB細胞は抗体という飛び道具を分泌して相手を攻撃します。T細胞には、リンパ球の働きを調整するヘルパーT細胞やサプレッサーT細胞、直接相手を攻撃するキラーT細胞(細胞傷害性T細胞)があります。
ナチュラルキラー(natural killer)細胞(略してNK細胞)やマクロファージは異物を直接に攻撃する細胞で、腫瘍細胞やウイルス感染細胞を見つけると直ちに攻撃するため、がんに対する第一次防衛機構として、特に発がん過程の初期段階でのがん細胞の排除において重要な役割を果たしています。
また、T細胞やマクロファージはサイトカインと呼ばれる蛋白質を作って放出します。サイトカインにはインターフェロン(IFN)や種々のインターロイキン(IL)があり、直接がん細胞を攻撃したり、他の免疫細胞の機能を調節することによってがん細胞との戦いに加わります。
免疫細胞が絶えず体内を監視していて、異常を起こした細胞を見つけて排除する仕組みを免疫監視機構と呼んでいます。免疫監視機能が正常であれば、通常はがん細胞が増殖して成長することはありません。
免疫細胞の働きが弱まるとがんが発生しやすくなります。免疫不全を引き起こすエイズ(AIDS)の患者さんに悪性腫瘍が多いことはよく知られています。免疫機能の低下の原因として最も重要なのは老化によるものであり、そのほか精神的・肉体的なストレスや栄養障害なども重要です。老化とともにがんの発生が増えることや、ストレスががんの発生や進行を促進することも、その原因は免疫力が低下するからです。人間の免疫力は18〜22才くらいをピークにして年令とともに衰え、がん年令の始まりといわれる40才台の免疫力はピーク時の半分まで下がり、その後も加齢とともに下降するといわれています。

【活性化リンパ球療法とがんワクチン療法と樹状細胞療法】

活性化リンパ球療法は、患者から血液を採取し、その血液に含まれるTリンパ球を増殖・活性化して、再度体内に戻す免疫療法の一つです。血液内で非戦闘状態にあるTリンパ球を体外に取り出して、CD3というT細胞表面分子を刺激したり、リンパ球を刺激・増殖させる蛋白質を加えて培養すると、戦闘状態に活性化されたTリンパ球を増やすことができます。活性化したリンパ球でがん細胞を攻撃させることを目的としていますが、増殖した活性化リンパ球が必ずしもがん細胞を敵と認識しないので、その抗腫瘍効果には限界があります
そこで、リンパ球にがん細胞を認識させる方法として、がんワクチン療法樹状細胞療法が行なわれています。
正常細胞には存在せず、がん細胞には存在する成分があれば、その成分を抗原としてがん患者に投与すると、ウイルスに対するワクチン療法と同じように、がん細胞に対する特異的な抗腫瘍免疫を誘導することができます。
がん細胞の特異的な抗原を「がん抗原」といい、そのがん抗原を体内に投与すると、キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)が活性化され、がん細胞を攻撃するようになります。このようにがん特異的抗原を見つけ、がんワクチンとして投与してがんを排除させようとする治療法が「がんワクチン療法」です。がん抗原をT細胞に提示する樹状細胞を利用して、がん細胞に対する攻撃力を高める治療法が「樹状細胞療法」です。
これらはまだ研究段階ですが、リンパ球ががん細胞を認識して攻撃するようにできれば、免疫療法の効果はさらに高まると考えられています。

【特異的免疫と非特異的免疫】

がん細胞を攻撃する免疫(抗腫瘍免疫)には特異的免疫非特異的免疫が区別されます。マクロファージや樹状細胞と呼ばれる細胞が、がん細胞からがん抗原ペプチドと呼ばれる小さな蛋白質を捕足し、その情報がヘルパーT細胞に伝えられ、その情報に従って特定のがんに対する免疫応答が引き起こされるのが特異的免疫です。NK細胞やマクロファージなどががんの種類に関係なく攻撃を仕掛けるようなものを非特異的免疫といいます(図)。

図。がん細胞に存在する「がん抗原」の情報は、抗原提示細胞とよばれるマクロファージや樹状細胞によってヘルパーT細胞に伝えられ、サイトカインの作用も加わってキラーT細胞やB細胞などを活性化する。キラーT細胞(細胞障害性T細胞)は抗原提示細胞の情報に従いがん細胞に近づき、細胞毒をがん細胞に放り込み、がん細胞を殺す。マクロファージからのサイトカインはナチュラルキラー細胞(NK細胞)も活性化し、非特異的な腫瘍免疫も増強する。このようにがん細胞に立ち向かう免疫細胞が次々に活性化されていきがん細胞への効果的な攻撃が行われる。


NK細胞はがん細胞に特異的に存在するがん抗原で活性化する必要は無く、自己性を喪失した異常な細胞を認識して攻撃します。
一方、T細胞の場合は、がん抗原で活性化されて初めて細胞傷害活性を持つようになります。すなわち、細胞傷害活性を持たないT細胞が抗原提示細胞からがん抗原ペプチド(がん抗原)を提示されて活性化してはじめてがん細胞に対して特異的な細胞傷害活性を持つ細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)となり、がん細胞を攻撃するようになります。細胞傷害性T細胞は細胞傷害物質であるパーフォリン、グランザイム, TNF(tumor necrosis factor)などを放出したり、ターゲット細胞のFasを刺激してアポトーシス(プログラム細胞死)に陥らせることで異物を攻撃します。細胞傷害性T細胞の一部はメモリーT細胞となって、異物に対する細胞傷害活性を持ったまま宿主内に記憶され、次に同じ異物に暴露された場合に対応できるよう備えます。
最近では、マクロファージやNK細胞による非特異的免疫は「自然免疫」、リンパ球による特異的免疫は「獲得免疫」と呼ばれることが多くなっています。

免疫療法には、活性化したナチュラルキラー細胞を増やす方法(非特異的免疫療法)と、がん細胞に特異的な抗原に反応する細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)を誘導する方法(がん抗原特異的免疫療法)の2つが主体になります。T細胞を増やすだけの通常の活性化リンパ球療法だけでは効果はあまり期待できません。がん抗原に関係なくがん細胞を攻撃するNK細胞か、がん抗原特異的に活性化された細胞障害性T細胞を増やすことが必要になります。

漢方薬や健康食品による非特異的免疫(自然免疫)の増強もがん抗原特異的な獲得免疫を高める上で重要です。局所の非特異的免疫系(自然免疫系)で起こったことが、樹状細胞を仲立ちとして、全身の特異免疫系(獲得免疫系)に伝えられることがわかってきました。つまり、獲得免疫系(全身免疫)は局所の自然免疫系(非特異的免疫)の制御下にあり、漢方薬や健康食品による非特異的な免疫力の増強が、抗原特異的な獲得免疫系の増強効果を示すことを意味しています。
βグルカンや蛋白多糖体や細菌製剤などを使った免疫療法は、NK細胞やマクロファージを活性化する事によってがん抗原非特異的な免疫力を増強する作用が主体ですが、リンパ球からのサイトカインの分泌を刺激することによってがん抗原特異的な免疫力を高める効果も発揮します。
抗原非特異的ながん免疫療法は、単独では進行がんに対して切れ味のよい腫瘍縮小効果が得られないため、有効性に疑問を抱く臨床医が多いのは事実です。しかし、がん治療の効果を高め、再発予防に有効であることを示す証拠は多数報告されています。
例えば、胃がん手術後に、抗がん剤(マイトマイシンCとフルオロウラシル)を投与する治療法において、カワラタケ由来の蛋白多糖製剤のクレスチンを併用した場合の効果を比較した臨床試験が報告されています。抗がん剤単独の場合には5年生存率が60.%であったのに対し、抗がん剤にクレスチンを併用すると5年生存率が73%に延長したという結果が報告されています。

近年、分子免疫学の進歩によりがん細胞に特異的な蛋白質を作り出す遺伝子が発見され、がん抗原をターゲットにしたがんワクチンや遺伝子治療などがん抗原特異的な免疫療法も可能になりつつあります。がん抗原特異的な免疫療法の鍵になる細胞が抗原提示細胞の樹状細胞です。

【樹状細胞とは】

細菌やがん細胞の死骸などがマクロファージによって貪食されると、細胞内でペプチドに分解され、その結果生じた抗原ペプチド(アミノ酸が10〜15程度)は、主要組織適合抗原分子(MHC分子)の溝に挟まれるように結合してマクロファージ表面に提示されます。ヘルパーT細胞はこの提示された抗原を認識して活性化され、抗原特異的な免疫応答が起こります。抗原提示細胞として、マクロファージの他に、組織内の樹状細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、活性化B細胞が知られています。
樹状細胞(dendritic cell)は、皮膚組織をはじめとして、外界に触れる鼻腔や肺や胃腸に存在し、その名が示す通り樹状あるいは樹枝状の突起を伸ばす形態が特徴的な細胞です。表皮の樹状細胞はランゲルハンス細胞と呼ばれます。抗原を取り込むと樹状細胞は活性化され、脾臓やリンパ節などのリンパ器官に移動し、取り込んだ抗原に特異的なT細胞やB細胞を活性化します。 
がんの治療法として、樹状細胞をがん細胞やがん抗原で活性化して、がん特異的免疫を誘導しようとする治療法が試みられています。
具体的な方法は、まず血液成分分離装置を用いて、樹状細胞のもとになる白血球細胞を採取し、プラスチック接着法を用い単球を分離します。その単球にGM-CSFとIL-4というサイトカインを加えて培養し、未熟樹状細胞へと分化させます。その後、あらかじめ摘出しておいたがん細胞や合成したがん抗原ペプチドを未熟樹状細胞に取り込ませ、TNF-αなどのサイトカインを加え、成熟樹状細胞へと分化させます。そのようにして作成した成熟樹状細胞を皮膚(皮内)に注射します。するとそれらの樹状細胞はリンパ流に乗って所属リンパ節まで到達し、免疫担当細胞(T細胞)へ情報を伝え、がん細胞を排除する免疫反応を誘発させることができるのです。活性化した樹状細胞をくり返すことによって、がん抗原特異的な免疫力を増強できます。
このように直接的な方法で、がん細胞やがん抗原と樹状細胞を接触させて、がん特異的免疫力を高める方法の他に、漢方薬などによって体内の樹状細胞の働きを高めて、がん特異免疫を高める方法も検討されています。
たとえば、生薬の欝金(うこん)に含まれるクルクミンには、活性化した樹状細胞のインドールアミン酸素添加酵素(IDO)を抑制して抗腫瘍免疫を高めることが報告されています。(J. Biol. Chem. 284:3700-3708, 2009)
インドールアミン酸素添加酵素(IDO)はアミノ酸のトリプトファンをN-Formylkynurenineへ代謝する酸素添加酵素です。この酵素(IDO)は制御性T細胞の誘導など免疫抑制作用(免疫寛容)の成立において重要な役割を果たしており、その作用機序は局所的なトリプトファンの枯渇とその代謝産物(キヌレニンなど)によ ると考えられています。 多くの癌ではIDOの高発現が認められ、がん細胞はその免疫抑制作用を巧みに利用して宿主の免疫監視機構を回避しつつ増殖していることが知られています。さらに、IDOを多く発現しているがん細胞が進行が早く、治療に抵抗して予後が悪いことが報告されています。最近の報告で、COX-2阻害剤のcelecoxib(セレブレックス、セレコックス)がIDOを阻害して免疫寛容を解除して、がんに対する免疫力を高めることが報告されていますまた、漢方薬のアジュバント効果はいろんな免疫療法の効果増強に役立つ可能性があります。

【ナチュラルキラー(NK細胞)とは】

ナチュラルキラー(natural killer)細胞(略してNK細胞)は、ターゲットの細胞を殺すのにT細胞と異なり事前に感作させておく必要が無いことから、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)という意味で名付けられました。「感作」というのは、前もって抗原に対する認識能を高めておくことで、感作させておく必要がないというのは、初めて出あった細胞でも、それががん細胞やウイルス感染細胞であれば、直ちにその異常細胞を認識して攻撃できるということです。
腫瘍細胞やウイルス感染細胞を見つけると直ちに攻撃するため、がんに対する第一次防衛機構として、特に発がん過程の初期段階でのがん細胞の排除において重要な役割を果たしています。
NK細胞の細胞質にはパーフォリンやグランザイムといった細胞傷害性のタンパク質をもち、これらを放出してターゲットの細胞を死滅させます。

NK細胞は、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスI分子が喪失した細胞を認識して攻撃すると考えられています。MHCクラスI分子は、自己と他者を識別するマーカーのような細胞表面の分子で、がん細胞やウイルス感染細胞では、このMHCクラスI分子の発現が低下していることがあり、その変化(自己性の喪失)を認識して攻撃します。したがって、がん細胞やウイルス感染細胞でもMHCクラスI分子が発現しているとNK細胞で破壊されません。
一方、特異的免疫の細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)ががん細胞を認識するためには、がん細胞がMHCクラスI分子を発現しておく必要があります。MHCクラスI分子の発現が低下したがん細胞はキラーT細胞の攻撃から逃れることになりますが、キラーT細胞から逃れたがん細胞はNK細胞が攻撃することになり、NK細胞とキラーT細胞は相補的に働くことになります。
したがって、免疫力を高めてがん細胞を攻撃するときには、特異的免疫と非特異的免疫の両方をバランス良く高めることが必要です。

【漢方薬のアジュバント効果】

マウスに蛋白抗原で免疫するとき、蛋白抗原だけを投与しても弱い免疫反応しか起こりませんが、蛋白抗原に少し細菌の菌体成分を混ぜると免疫反応が強く起こる現象が昔から知られており、このような免疫附活剤(アジュバント)のことを「little dirty secret」と呼んでいました。抗原に汚いものを少し混ぜるのが免疫反応を起こすコツということです。
アジュバント (Adjuvant) とは、ラテン語の adjuvare(助ける)に由来し、医学領域では「効果を高める(増強する)」という意味で免疫学やがん治療の領域で使用される用語です。
アジュバントは免疫賦活剤や免疫刺激剤などと呼ばれるもので、抗原に対する免疫応答を促進させ、獲得免疫を増強する物質の総称です。その多くは細菌菌体由来の物質ですが、漢方方剤に含まれる多糖類などの高分子画分やサポニンなどにもアジュバンド効果が指摘されています。
がんに対する免疫反応を強く起こすうえでも、アジュバントが重要な役割を果たすと考えられています。
細菌やウイルスなどの微生物が侵入すると、宿主にはない構造を認識し抗原提示がスムーズに行われ、免疫応答は適切に行われます。しかし、がん細胞のように正常細胞にも微量に存在する宿主由来のものを抗原として認識する場合、活性化シグナルはうまく伝達されず、十分に免疫力が上がらないことが多いのが問題です。
そのため腫瘍免疫療法には、アジュバントによって免疫応答の活性化を助ける必要があります

【Toll 様受容体】

アジュバントが強い免疫反応を惹起する分子メカニズムはToll様受容体(Toll-like receptor :略してTLR)の発見によって、ここ数年急速に明らかになりました。
TLRは1から11(TLR1からTLR11と呼ばれる)まであり、好中球、マクロファージ、樹状細胞といった自然免疫系(抗原非特異的な初期の免疫反応を司る免疫系)の細胞に主に発現し、種々の微生物の成分を認識し、免疫系を活性化するレセプターとして機能します。
例えば、TLR4はマクロファージに発現し、グラム陰性桿菌の細胞壁にあるリポ多糖(LPS)を認識して、マクロファージを強く活性化します。
TLRを介して菌体成分を認識した自然免疫系の細胞が感染巣で病原微生物の増殖を食い止めている間に、樹状細胞が微生物を取り込んで消化し、蛋白成分由来のペプチドをMHC分子上に提示して、抗原特異的なT細胞を刺激することにより、獲得免疫系(T細胞やB細胞など抗原特異的に反応するリンパ球からなる免疫系)を活性化し、病原微生物が排除されます。
つまり、TLRを介する自然免疫系の活性化が樹状細胞の活性化を介して獲得免疫反応を誘導します
自然免疫 → 樹状細胞 → 獲得免疫という流れがあり、アジュバントによる自然免疫系の活性化が、最終的な抗原の排除に重要です。
獲得免疫が有効に働くためには、TLRなどを介した自然免疫の作動が必要ですキノコに含まれる多糖成分など、Toll様受容体を活性化して自然免疫を高める成分が生薬から見つかっています。

【抗がん剤治療と免疫療法の併用の意義】

腫瘍量が多いと抗腫瘍免疫効果が追いつかず、また免疫寛容(トレランス)の誘導や、がん組織による免疫抑制が起こりやすい状態になっています。
したがって、他の治療で腫瘍量を極力減らした段階が、免疫療法を行なうのに最適な時期というのが共通の認識です
抗原提示細胞やリンパ球やNK細胞の働きを高める漢方薬を抗がん剤治療と併用すると、抗がん剤で死滅したがん細胞がマクロファージや樹状細胞で処理される過程で、がん特異的な免疫力が高まる可能性があります。したがって、抗がん剤治療に、樹状細胞やマクロファージやNK細胞やリンパ球の働きを非特異的に高める漢方治療も役立つと言えます。

【慢性炎症は抗腫瘍免疫を抑制する】

副腎皮質ホルモンは炎症を抑える効果がありますが、免疫力も強力に低下させます。非ステロイド性抗炎症剤なども、免疫力を低下させるのではないかと懸念されます。
しかし、慢性炎症は発がんを促進すると同時に、免疫抑制系のT細胞を活性化し、樹状細胞やキラーT細胞の活性を弱めることが知られています。
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤は、免疫抑制作用(免疫寛容)の成立において重要な役割を果たしている
インドールアミン酸素添加酵素(IDO)の作用を阻害して、がん細胞に対する免疫寛容を解除し、がんに対する免疫力を高めることが報告されています。

進行がんでは、がん組織からTGF-β、プロスタグランジンE2、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの免疫抑制性の因子が産生され、樹状細胞やリンパ球の働きを強く抑制していることが明らかになっています。このような免疫抑制の環境を改善するためには、プロスタグランジンE2の産生を抑えるCOX-2阻害剤や、VEGFの産生を抑えるサリドマイドは有効です。
サリドマイドは 腫瘍血管の新生を促進するVascular Endothelial Growth Factor(VEGF,血管内皮増殖因子)の産生を抑えます。さらに、 T細胞受容体を介したT細胞の反応性を高め、T細胞の増殖を刺激し、IL-2とインターフェロン-γの産生を促進する作用や、ナチュラルキラー細胞の数を増加させる作用があります。サリドマイドによって腫瘍細胞のアポトーシス感受性が高まるので、リンパ球によるFasやTRAILを介した腫瘍細胞のアポトーシスが起こりやすくなります。(リンパ球はFasやTRAILという受容体を介したメカニズムで腫瘍細胞にアポトーシスを誘導しています)
炎症やがん性悪液質が強い場合には、VEGFやTNF-αの産生を抑制し、悪液質を軽減するサリドマイドや、プロスタグランジンE2の産生を阻害するCOX-2阻害剤の併用が有効だと言えます。
また、抗酸化作用や
抗炎症作用のある漢方薬も、炎症に由来して抗腫瘍免疫を抑制している要因(IDOの活性上昇やCOX-2の発現上昇、活性酸素の産生増加など)を阻害することによって、免疫寛容状態を軽減して、がん細胞に対する免疫力を高める効果が指摘されています。

図。慢性炎症は、活性酸素の産生や、がん細胞や炎症細胞における転写因子NF-κBの活性を高めて、がん細胞の増殖を促進する。さらに、抗原提示細胞の樹状細胞のインドールアミン酸素添加酵素の活性を高めたり、シクロオクシゲナーゼ-2(COX-2)の活性化などによって、がん細胞に対する免疫寛容の成立に関わっている。抗酸化作用や抗炎症作用のある漢方薬や、COX-2阻害剤やサリドマイドはがん細胞の増殖を抑えると同時に、免疫寛容を軽減する効果が期待できる。

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