5.アブラナ科野菜(キャベツ、ブロッコリー、ケールなど)は抗ガン力を高める。

アブラナ科野菜(キャベツ、ブロッコリー、ケールなど)の辛味成分であるイソチオシアン酸塩成分には体内の解毒酵素の働きや抗酸化力を高める効果が知られており、アブラナ科野菜をジュースや料理などに使って1日100グラム以上食べることはガン再発の予防に効果があります。

【アブラナ科野菜とは】

アブラナ(油菜)は菜の花とも呼ばれていて、3〜5月に黄色の十字架状の花が密集して咲く背丈が1〜2mの植物です。種には油が多くふくまれていて植物油の原料として栽培されていましたが、近年、野菜としてスーパーでも売られるようになりました。

アブラナと同じ仲間(アブラナ科)で野菜として食用されているものに、キャベツ、ブロッコリー、ケール、カリフラワー、芽キャベツ、ダイコン、ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイ、ワサビなどがあります。茎の上部にある葉の基部の葉肉が張り出して耳状になり、茎を抱くのが特徴です。

【肝臓のフェース2酵素群が発ガン物質を解毒する】

薬物や発ガン物質などが体内に摂取されると,肝臓などの細胞内にある酵素の働きによって解毒されて体外に排泄されます。このような解毒酵素には大きくフェース1酵素群(phase 1 enzymes)とフェース2酵素群(phase 2 enzymes)に分類されています。フェース1酵素は物質を酸化したり加水分解して物質を変換し、フェース2酵素は抱合反応などによって解毒する作用をもっています。このような薬物代謝酵素は多くの場合薬物の作用の消失を導くことから、解毒反応と呼ばれていますが、フェース1酵素群は場合によっては、発ガン物質の前駆体を活性化し、発ガン性を持たせるように働くこともあります。

一方、グルタチオン・S・トランスフェラーゼ(glutathione S-transferases), キノン還元酵素(quinone reductases)などのフェース2酵素は、DNAの変異を起こす発ガン物質を不活化する作用を持っているので、フェース2酵素の量を増やす作用の食品や薬物のガン予防効果が注目されています。

【アブラナ科野菜のガン予防効果はイソチオシアン酸塩成分が関与】

アブラナ科の野菜にはガン予防効果が報告されていますが、その最も大きな理由は、アブラナ科の野菜に多く含まれているイソチオシアン酸塩成分にフェース2酵素の量を増やす作用があるからです。イソチオシアン酸塩はアブラナ科野菜に含まれる辛味成分です。

ジョンズ・ホプキンス大学のポール・タラレー博士らは、ブロッコリーに含まれるスルフォラファン(Sulforaphane)というイソチオシアン酸塩成分がフェース2酵素の合成を誘導する効果が強く、ガン予防に効果があることを1994年に発見しました。その後も多くの研究でアブラナ科野菜に含まれるイソチオシアン酸塩成分のガン予防効果が確認されています。

Anticarcinogenic activities of sulforaphane and structurally related synthetic norbornyl isothiocyanates.(Zhang Y, Kensler TW, Cho CG, Posner GH, Talalay P.)Proc Natl Acad Sci U S A 1994 Apr 12;91(8):3147-50

ブロッコリーなどアブラナ科野菜はビタミンCやA、食物繊維、カルシウムなども豊富ですので、ガン予防にはさらに効果が期待できます。

【ブロッコリーの新芽はガン予防効果が高い】

さらにタラレー博士らは1997年、ブロッコリーやカリフラワーの新芽(3日目くらい)には、成長したブロッコリーの10-100倍近いイソチオシアン酸塩成分があることを発見しました。成長したブロッコリーにはガンを促進する物質が分解産物として生成する成分も含まれているのですが、新芽にはそのような成分が少ないとも報告されています。

(成長したブロッコリーにはindole glucosinolatesが含まれていて、その分解産物のindole-3-carbinolなどは発ガンを促進することが知られている。ブロッコリーの新芽にはindole glucosinolatesが少ない)

Broccoli sprouts: an exceptionally rich source of inducers of enzymes that protect against chemical carcinogens.(Fahey JW, Zhang Y, Talalay P.)Proc Natl Acad Sci U S A 1997 Sep 16;94(19):10367-72

このような研究から、ガン予防の食品としてブロッコリーの新芽が一躍注目されています。サンドイッチやサラダに入れるとおいしい若芽は、かなり市場に出回るようになりました。ブロッコリーの新芽から作ったサプリメントや健康食品も販売されています。

【野菜ジュースや青汁の利用も効果的】

ガン予防作用のあるイソチオシアン酸塩成分は野菜の細胞を壊すことで吸収しやすくなるのでアブラナ科野菜を食べる時にはとにかく良く噛むことが大切です。野菜ジュースとして摂取することは効果があります。また、生の野菜をすりつぶして絞った絞り汁(青汁)を利用するのも効果的です。ケールを材料にした青汁などが販売されています。

【文献的考察】
イソチオシアン酸塩成分(イソチオシアネート)はガン細胞の増殖を抑え、抗ガン力を高める作用を持つ。

Dietary indoles and isothiocyanates that are generated from cruciferous vegetables can both stimulate apoptosis and confer protection against DNA damage in human colon cell lines.
(Bonnesen C, Eggleston IM, Hayes JD.)Cancer Res 2001 Aug 15;61(16):6120-30
アブラナ科野菜に含まれる天然のインドール類やイソチオシアネート類は、ヒト大腸ガン細胞に対してアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導し、DNAの変異に対する防御力を高める効果がある。

Role of phase 2 enzyme induction in chemoprotection by dithiolethiones.(Kwak MK, Egner PA, Dolan PM, Ramos-Gomez M, Groopman JD, Itoh K, Yamamoto M, Kensler TW.) Mutat Res 2001 Sep 1;480-481:305-15
イソチオシアネートの1,2-dithiole-3-thiones をラットに投与すると、転写因子のNrf2が細胞核内に蓄積し、遺伝子の抗酸化反応エレメント(antioxidant response element)への結合を促進して、抗酸化に働く種々の遺伝子の発現を誘導して酸化ストレスを軽減させる作用がある。

Inhibition of carcinogenesis by isothiocyanates. (Hecht SS.)Drug Metab Rev 2000 Aug-Nov;32(3-4):395-411
アブラナ科野菜を通常量取っておれば、ガン予防に十分な量のイソチオシアネートを摂取できる。イソチオシアネートのガン予防効果は、発ガン物質の活性化に関与する酵素(チトクロームP450酵素)の働きを抑え、フェース2酵素を誘導し、ガン細胞にアポトーシス(細胞死)を引き起こす活性が関与している。

Signal transduction events elicited by cancer prevention compounds.
(Kong AN, Yu R, Hebbar V, Chen C, Owuor E, Hu R, Ee R, Mandlekar S.)Mutat Res 2001 Sep 1;480-481:231-41

glutathione S-transferases (GST) や quinone reductases (QR)といったフェース2解毒酵素は内因性および外因性の発ガン物質に対して防御する働きがある。フェース2解毒酵素の遺伝子の発現調節領域には、antioxidant or electrophile response element (ARE/EpRE) という領域があって、Nrf2という転写因子が結合するとフェース2解毒酵素の発現が誘導される。 フェース2解毒酵素の発現を誘導するイソチオシアネートなどのフェノール性抗酸化剤はmitogen-activated protein kinases (MAPK)を活性化して、AREを介する遺伝子の発現を促進する。

Chemoprotective glucosinolates and isothiocyanates of broccoli sprouts: metabolism and excretion in humans.(Shapiro TA, Fahey JW, Wade KL, Stephenson KK, Talalay P.)Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2001 May;10(5):501-8
ブロッコリーの新芽(sprouts)はフェース2解毒酵素を誘導し、抗酸化力を高め、発ガンを予防するグルコシノレート(glucosinolates)やイソチオシアネート(isothiocyanates)が豊富。グルコシノレートは植物や腸内細菌にふくまれるミロシナーゼ(myrosinase)によって分解されてイソチオシアネートになる。
生体内では、イソチオシアネートはグルタチオンと抱合され、mercapturic acidsに代謝され、これらの代謝産物はジチオカルバメート(dithiocarbamates)と呼ばれている。ジチオカルバメートの尿中排泄は新鮮な生のブロッコリーの芽をよく噛んで食べると増加している。

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