「抗がん生薬」と言われる生薬には「清熱解毒」という薬効をもったものが多く見られます。「清熱」とは抗炎症・解熱作用のことであり、解毒とは病原菌(細菌やウイルスなど)を殺したり、体に毒になる物質(発がん物質やフリーラジカルなど)を無毒化することです。
抗菌や抗ウイルス作用は抗がん作用と密接に関連しています。西洋医学で使われる抗がん剤にも、ブレオマイシン、マイトマイシン、ネオカルチノスタチンなど抗生物質から開発されたものが多くあります。細菌を殺すのもがん細胞を殺すのも似ているからです。抗がん剤治療を化学療法とも言いますが、化学療法とは、元来は細菌感染症に対して抗菌物質を使って治療することを指していました。これと同じ考え方でがんに対して抗がん剤を使って治療する場合も化学療法というようになっています。
抗がん剤の中には植物アルカロイド(オンコビン、タキソール、タキソテールなど)もあります。アルカロイド以外にも、フラボノイドやテルペン類など抗腫瘍効果をもった物質が植物から多く見つかっています。植物には、虫や鳥やカビなどの外界からの攻撃から身を守るため、多くの毒を持っており、この毒性物質が抗菌・抗ウイルス・抗がん作用を示していると考えられます。植物由来の生薬の中で、感染症や熱性疾患の治療に用いられているものの中に、がんに対して治療効果を持つものがあるのは不思議ではありません。
抗がん生薬(がんを縮小させる効果をもつ生薬)の中にマラリアの治療に用いられているものがあります。中国の南方地方などではマラリアの治療に漢方薬が古くから使用されていました。このような漢方薬の中から抗がん物質も見つかっています。
青蒿(セイコウ)という生薬は強力な解熱作用があり、マラリアの治療に古くから使用されていました。青蒿はartemisia
annuaという植物です。artemisiaとはヨモギのことで、青蒿はキク科ヨモギ属の植物です。英語ではsweet
Annieやwormwoodと呼ばれ、和名はクソニンジンとかカワラニンジンと呼ばれています。
その解熱成分のアルテミシニン(artemisinin)とその誘導体はマラリアの特効薬として薬品として開発されています。近年、このアルテミシニン誘導体が抗がん物質として注目を集めています。
アルテミシニン誘導体を使った癌治療はまだ研究段階ですが、すでに臨床例での検討も行われており、有効性が報告されています。アルテミシニン誘導体は抗マラリア薬として使用され安全性も検討されていますが、癌治療においてはまだ治療法として確立していないので、自己責任のもとに治療を受けなければなりません。(私のクリニックではArtesunateを用いた癌の代替治療を行っています)
Cytotoxic terpenoids and flavonoids from Artemisia
annua.(青蒿に含まれる殺細胞性のテルペノイドとフラボノイド) Planta Med, 60(1):54-57,
1994 |
(要旨)青蒿(Artemisia
annua)から分離されたテルペノイドとフラボノイドの抗腫瘍活性(殺細胞活性)を種々の培養癌細胞を用いて検討。Artemisinin と
quercetagetin 6,7,3',4'-tetramethyl ether が癌細胞に対して強い殺細胞活性を示した。
The anti-malarial artesunate is also active against
cancer.(抗マラリア薬のartesunateは癌に対しても効果がある) Int J Oncol ;18(4):767-773,
2001
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(要旨)Artesunateは、中国生薬の青蒿(Artemisia
annua)の活性成分であるartemisininの半合成誘導体であり、多剤耐性のマラリアに対して著明な治療効果を持つ。この論文ではArtesunateの抗腫瘍活性を55種類の癌細胞株について検討した結果を報告。
Artesunateが最も効果を示したのは白血病と大腸癌であり、50%増殖阻止濃度は1〜2μMの濃度レベルであった。
非小細胞肺癌が最も感受性が悪く、50%増殖阻止濃度は10〜40μのレベルであった。
メラノーマ、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、中枢神経系腫瘍、腎癌に対しては中間のレベルの抗腫瘍活性を示した。
Artesunateの抗腫瘍作用を示す濃度は、通常の抗がん剤と同じレベルであった。また、通常の抗がん剤に耐性の癌に対しても抗腫瘍活性を示した。Artesunateは毒性が低いので、癌治療薬の有望な候補と考えられる。
| mRNA expression profiles for the response of human tumor cell lines to the
antimalarial drugs artesunate, arteether, and artemether.(抗マラリア薬のartesunate,
arteether, artemetherに対するヒト癌細胞株の反応を示すmRNA発現プロフィール) Biochem
Pharmacol;64(4):617-623, 2002 |
(要旨)抗マラリア薬のartemisinin の誘導体である artesunate, arteether,
artemetherは著明な抗腫瘍活性を持っている。この論文ではこれらの物質の抗腫瘍活性のメカニズムを、遺伝子発現の面から他の抗癌剤と比較検討。その結果、artemisinin
誘導体の抗腫瘍活性のメカニズムは既存の抗がん剤とは異なることが示唆された。