進行乳癌に有効な代替医療について

再発や進行した乳癌に対する標準的治療として化学療法(抗癌剤や抗ホルモン剤)や放射線療法が行われますが、治療抵抗性の場合が多いのが現状です。

(1)血管新生阻害作用や悪液質改善効果を有するサリドマイドは単独では乳癌に対して効果は低いのですが、その他の血管新生阻害剤(COX-2阻害剤サメ軟骨エキスなど)と併用することによって癌の進展を抑制できる可能性があります。

(2)乳癌細胞の抗癌剤感受性を高め、治療抵抗性を軽減する方法としてCOX-2阻害剤(セレブレックス)や抗マラリア薬のアルテスネイト製剤(Arinate)アルテミシニン誘導体製剤(Arinate)の有用性が報告されています。セレブレックスには抗癌剤の副作用を軽減する効果も報告されています。アルテスネイトやアルテミシニンは特に乳癌に効果のある代替医療として米国で使用されています。

(3)メラトニンは抗酸化力と免疫力を高め、抗癌剤やホルモン療法の効果を高めることが臨床試験で明らかになっています。メラトニンには悪液質を改善する効果もあります。メラトニンは不眠や時差ぼけに使用されているサプリメントで、抗老化作用でも人気があります。いろいろな癌においても延命効果が報告されています。

(4)乳癌に対する抗癌活性が経験的に知られている生薬として蒲公英、竜葵、半枝蓮、白花蛇舌草、夏枯草、莪朮、三稜などがあり、これらの抗癌生薬に病状や体力に応じて滋養強壮薬や免疫力を高める生薬などを組み合せた漢方薬を併用すると癌細胞の増殖活性を抑えると同時に、癌に対する抵抗力や治癒力を高めることができます。セレブレックスやメラトニンと併用すると抗腫瘍効果が高まります。

(5)IP-6 & Inositolという米国のサプリメントは、癌に対する免疫力の中心であるナチュラルキラー細胞活性を高める効果や、癌細胞の増殖を止める作用が報告されており、乳癌にも有効であると報告されています。

(6)その他に、抗酸化力や免疫力を高めるサプリメントとしてコロストラム-アルファやCoQ10が有用です。

当クリニックで行っている進行乳癌の代替医療としては、

COX-2阻害剤(セレブレックス)、抗癌漢方薬、抗マラリア薬(アルテスネイト)、メラトニンのうち2〜4つの治療法を、病状や治療の状況に応じて組み合せることを基本とし、血管新生阻害が有効と考えられるときには、サリドマイドやサメ軟骨エキスなどの併用を考慮しています。栄養状態が悪いときや抵抗力の低下があるときにはコロストラム-アルファやIP-6 & Inositolを使用します。

●乳がん治療におけるCOX-2阻害剤セレブレックス(Celebrex)の有用性:

プロスタグランジンを合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)にはCOX-1COX-2の2種類があり、癌に関連しているのはCOX-2の方です。
多くの消炎鎮痛剤にはシクロオキシゲナーゼ阻害作用がありますが、炎症や癌で増加するCOX-2だけでなく、消化管や腎臓や血小板などで生理的な作用をしているCOX-1も阻害するため、癌の治療には使いにくい欠点があります。しかし、COX-2の選択的阻害剤であれば、副作用が少なく抗癌作用が期待できます。

COX-1とCOX-2:

シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸からプロスタグランジンを合成するときに最初に働く酵素で、COX-1とCOX-2の2種類がある。
COX-1から合成されるプロスタグランジンは生体の生理機能に必要なものであるが、炎症性の刺激でCOX-2から合成される大量のプロスタグランジンは癌の発育や転移を促進する。

癌細胞やマクロファージ(炎症細胞)が産生するCOX-2が作り出すプロスタグランジンE2(PGE2)は腫瘍に対する免疫力を抑制する
癌細胞や炎症細胞のCOX-2から産生されるプロスタグランジンE2は、腫瘍血管新生・癌細胞の増殖刺激・抗腫瘍免疫の抑制などの作用によって癌を悪化させる。

乳癌細胞もCOX-2活性が高いため、COX-2阻害剤を使用すると抗腫瘍効果が期待できます。
COX-2阻害剤の中で抗腫瘍活性が注目されているものとして、欧米で認可されているセレブレックス(一般名;celecoxib)という薬があります。
この薬は、変形性関節症や慢性関節リウマチのような炎症性疾患と、大腸癌のリスクが高い家族性大腸腺腫症に発癌予防に対して使用されています。
セレブレックスにはCOX-2 阻害による血管新生阻害や増殖抑制効果だけでなく、癌細胞を直接殺す作用もあり、抗癌剤の治療効果を高めるなど多くの抗腫瘍効果が報告されています。

乳がん治療においても様々有用性が報告されており、以下はその一部です。

※COX-2由来のプラスタグランジンはアロマターゼ(脂肪組織でエストロゲンを作る酵素)の活性を高めることが知られています。したがって、乳癌のホルモン療法を行うときにはCOX-2阻害剤を併用することは有用と考えられます。 

タキソールタキソテールのような細胞内の微小管に作用する抗癌剤はCOX-2の発現を刺激することが報告されています。この作用はこれらの抗癌剤の治療効果を低下させることになります。したがって、タキソールやタキソテールによる抗癌剤治療を行うときにCOX-2阻害剤を併用すると治療 効果を高めることができます。

CPT-11(塩酸イリノテカン)は『カンプト』や『トポテシン』という商品名で使用される注射用の抗癌剤で、乳がん(手術不能又は再発)にも使用されますが、下痢の副作用によって、その使用が制限されることがあります。COX-2阻害剤のセレブレックスは、CPT-11の抗腫瘍効果を増強し、下痢の症状を軽減することが報告されています。

抗マラリア薬アルテスネイトについて:

サリドマイドの抗腫瘍効果について:

IP-6 & Inositolについて:

メラトニンについて:

コロストラム-アルファについて: