Editorial
Should Antioxidants be Used in Cancer Therapy?(がん治療に抗酸化剤は使用すべきか)
Alan L. Miller, ND

(和訳)

1999年のOncology(「腫瘍学」という意味)という雑誌に、抗がん剤と抗酸化剤の相互作用の可能性を論じた論文が掲載されている(文献1)。

ある種類の抗がん剤は活性酸素種(ROS)を発生し、そのROSががん細胞にダメージを与えるという事実を言及し、その論文の著者は、「ROSを発生して効果を示す抗がん剤の治療中は抗酸化物質を補充するようなサプリメントや食事は避けるべきである」と述べている。このような抗がん剤には、アルキル化剤(cyclophosphamide, ifosfamide, cisplatin)、アントラサイクリン系抗腫瘍抗生物質(doxorubicin, daunorubicin)、その他の抗腫瘍抗生物質(bleomycin, mitomycin)、podophyllum誘導体(etoposide, teniposide)などが含まれている。この論文では、作用機序が不明な抗がん剤についても、抗酸化剤が悪影響することが示唆されている。さらに、ホルモン剤(tamoxifen)、生物活性物質(インターフェロン)、代謝拮抗剤( methotrexate, 5-fluorouracil)、ビンカアルカロイド(vincristine, vinblastine)、タキサン類(paclitaxel)のようなROSを発生しない抗がん剤についても、「長期使用の臨床研究の結果が出るまで」は「大量の抗酸化剤の投与は避けるべき」であると忠告している。

ROSと反応して消去するような抗酸化物質が、ROSを発生してそれをがん細胞を殺すために使う抗がん剤の臨床効果を妨げる可能性があるという推測は理屈に合わないわけではない。

Oncologyの論文の著者らは、抗がん剤の薬理作用と薬効動態に基づいて、抗酸化剤はがん治療に使用すべきでない、という推論を立てている。

しかしながら、彼等の結論には、「抗酸化剤と抗がん剤の相互作用の証拠が実際にあるのか」と反語的に質問したあと、この自問に対して、「そのような相互作用には多くの説や考えがある」という無責任な答えしか出していない。

今月号の Alternative Medicine Review(「代替医療レビュー」という意味)の中で、 Davis W. Lamson博士と Matthew D. Brignall博士は上記の問題について、がん治療における抗酸化剤の使用や、放射線療法や抗がん剤治療との抗酸化剤の併用に関する科学的な証拠を検討した多くの文献を考察しながら詳細に答えている(文献2)

試験管内実験(in vitro研究)や動物実験やヒトでの臨床試験の結果に基づきながら、次のような結論をまとめている:抗酸化剤は、多くの場合、それ自身が抗腫瘍的に作用する」「放射線や抗がん剤の治療効果を高める」「がんの通常療法の毒性や重篤な副作用を軽減する」。

抗がん剤治療中の抗酸化剤の使用に対してあいまいな言及しかしていないOncologyの論文の著者らに反して、Lamson と Brignall は、全ての症例において、あるいは全ての抗がん剤に対して抗酸化剤を推奨しているわけではない。むしろ、がん治療に有用であるとか、通常療法に悪影響しなくてそれらの副作用を軽減させる、といった研究がある場合には、ある特定の抗酸化剤を、論理的で注意深い態度で、証拠に基づいて賢く使う方法を示している。

我々は、このレビュー論文が、この問題に関して有用は臨床情報として臨床家に提供され、医学界でさらに検討される切っ掛けとなり、がん患者の治療において抗酸化物質の使用に関する研究における興味が深まることを希望している。

文献:

1. Labriola D, Livingston R. Possible interactions between dietary antioxidants and chemotherapy. Oncology 1999;13:1003-1012.

2. Lamson DW, Brignall MS. Antioxidants in cancer therapy; their actions and interactions with oncologic therapies. Altern Med Rev 1999;4:304-329.