6.肝炎や肝癌の治療に有効なその他の方法

1)ウコンに含まれるクルクミンは抗酸化作用と抗炎症作用によってガンを予防する

ウコンは健康増進の様々な効果をもった民間薬で、その成分のクルクミンのガン予防作用が注目されています。漢方でも前述の駆オ血薬のひとつです。ウコンを加工した健康食品やウコンを含むハーブティーが市販されており、これらを利用することは肝炎の進展予防やガンの再発予防に効果が期待できます。

ウコン(Curcuma longa)はインドや東南アジアなど熱帯地方に生えているショウガ科の植物です。日本で流通している生薬の「欝金」はウコン(Curcuma longa)の根茎を用いていますが、中国ではこのCurcuma longaの根茎は姜黄(きょうおう)と呼ばれています。国内では、沖縄、九州南部、屋久島に自生し、また栽培もされています。

その根の部分は生姜に似ており、その乾燥粉末は「ターメリック」という香辛料であり、カレー粉の黄色い色素の元でもあるので馴染み深い食材です。黄色色素を利用してたくわんの着色剤やウコン染めの名で染料としても使われています。

昔から薬草としても使われており、利胆(胆汁の分泌促進)、芳香性健胃薬の他に止血や鎮痛を目的に漢方処方にも配合されます。肝臓の解毒機能を強化し、二日酔いの防止にも効果があります。最近では、胃腸病や高血圧などの幅広い効用も認められるようになりました。

1988年、アメリカのラトガ−ス大学薬学部のコニー博士らは、マウスを使った実験を行い、ウコンに含まれるクルクミン(curcumin)が皮膚ガンの発生を抑制するという研究結果を報告しました。それ以来、日本や台湾を中心にウコンのガン予防効果の研究が進められています。発ガン物質を使った動物実験では、皮膚ガン、胃ガン、大腸ガン、乳ガン、肝臓ガン、などの発生を抑える効果が報告されています。

クルクミンは胆汁分泌を促し、脂肪の消化吸収を助ける作用があり、肝臓の解毒作用を強化する働きがあります。強い抗酸化作用と同時に、NF-κBという転写因子の活性化を阻害することにより、炎症や発ガンを促進する誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)やシクロオキシゲナーゼー2(COX-2)の合成を抑えてガンの発生を予防したり、ガン細胞を死にやすくするなどの効果が最近の研究で明らかにされガン予防物質として注目を集めています。

クルクミンは、抗酸化作用、炎症細胞からの誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)やシクロオキシゲナーゼー2(COX-2)の合成を阻害する作用、ガン細胞のアポトーシス感受性を高める作用、などによってガン再発を予防する。

クルクミン含量の多いウコン・エキスを粉や粒にした健康食品も販売されています。お茶(ハーブティー)として日常的に飲用することもできます。ウコン茶を煎じるときは、1日量を6〜10グラムとし、400〜600ミリリットルの水に加えて沸騰させます。沸騰して5分ほどたったら火を止め、これを2〜3回に分けて空腹時に飲むようにします。また、煮物や焼き物に入れると、ショウガに似た独特の風味が楽しめます。抗酸化作用や免疫力増強作用のあるハーブティーとしてウコンと高麗人参の組み合わせは効果があります。

2)中国の民間薬の白花蛇舌草と半枝蓮はガンの治療や再発予防に使われている

白花蛇舌草(Oldenlandia diffusa)は本州から沖縄、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の1年草のフタバムグラの根を含む全草を乾燥したものです。田畑に生える雑草で、二枚の葉が対になっているためフタバムグラの名があります。

肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。各種の腫瘍に広く使用され、特に消化管の腫瘍(胃ガンや大腸ガンなど)に対しては比較的よい治療効果が報告されています。

脂肪肝やウイルス性肝炎やアルコール性肝炎などの各種肝障害で傷ついた肝細胞を修復する効果があり、さらに抗菌作用や抗炎症作用があるため、扁桃腺炎・気管支炎・咽喉炎・虫垂炎などの感染性疾患にも有効です。飲み易く刺激性が少ないので、中国では白花蛇舌草の含まれたお茶や煎じ薬はガン予防薬として人気を呼んでいるそうです。

半枝蓮 (Scutellaria barbata)はシソ科のScutellaria barbataの全草を乾燥させたものです。中国各地や台湾などに分布し、コガネバナ(生薬名:黄ごん)やタツナミソウと近縁のシソ科植物です。アルカロイド・フラボノイド配糖体・フェノール類・タンニンなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があって、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症などに使用されています。肺ガンや胃ガンなど種々のガンに対してある程度の効果があることが報告されています。台湾や中国では古くから消炎、排膿、解毒、殺菌作用、ヘビによる咬傷を治すなどの効能で、白花蛇舌草と半枝蓮が民間薬として使用されています。さらに、胃ガン、大腸ガン、肝ガンなどの消化器系ガンや肺ガン・子宮ガン・乳ガンに対する効果も指摘されて広く使用されています。

白花蛇舌草と半枝蓮は中国の民間薬であり、ガンに対する有効性は経験的なものですが、この2つの生薬の抗ガン活性に関する科学的な研究が、日本や欧米の医学雑誌などにも掲載されるようになりました。平成12年の和漢医薬学雑誌には「半枝蓮と白花蛇舌草の癌細胞増殖抑制効果と自然発症肝腫瘍マウスの延命効果」(和漢医薬学雑誌、17:165-169,2000)という題の論文が掲載されています。この研究では白花蛇舌草65gと半枝蓮32.5gを400 mlの熱水で抽出した液を作成し、肝臓癌を自然発症するマウスに自由摂取にて投与して、生存期間をコントロール群(薬を飲まなかったグループ)と比較検討しています。

肝臓癌が発病すると寿命が短くなるのですが、コントロール群の平均生存期間は55週齢であったのに対して、投与群では76週齢でした。約1.4倍に生存期間を延ばしたことになるのですが、投与群にも最終的には全例に肝臓癌の発生しているため、ガン発生を防止するというより、ガン細胞の増殖速度を抑えることによりガン化の進展を抑える可能性が示唆されています。

米国カリフォルニアのロマリンダ大学医学部の細菌学のWong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草を投与すると、マウスに移植した腎臓癌細胞(Renca細胞)の増殖が抑制され、その作用メカニズムとしてマクロファージが活性化して腫瘍の増殖を抑制することを報告しています。この報告では、それぞれの薬草の量はマウス1匹あたり1日4mgで検討されており、人の体重に換算すると1日8−10g程度に相当します。一般的にマウスは人よりも代謝が早いので、体重あたりで換算するとマウスの方がより大量の薬が必要な事が多いので、人で1日10g程度で十分に効果が期待できると推測されます。また、Wong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草には発ガン物質の活性化(変異原性)を抑える可能性も報告しています。

3)抗TNF-α治療

腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-alpha, TNF-α)は、C型肝炎における炎症反応の中心的なメディエーターであることが報告されています。TNF-αの血中レベルは、C型肝炎患者におけるALT(肝細胞が障害されると血中に放出される酵素の一種)の血中レベルや線維化の程度と相関することが報告されています。また、インターフェロン治療によって肝炎が軽快した患者においてTNF-αの血中濃度が低下することが知られています。

このような状態で、血中のTNF-αを低下させる生薬やハーブもいくつか知られています。お茶、イチョウ葉エキス、生姜、ナツシロツメクサ(feverfew)などが、TNF-αを低下させることが報告されています。

多くのハーブに含まれるケルセチン(quercetin)というフラボノイドには、TNF-αの産生を阻害する強い活性があります。ケルセチン以外にも、フラボノイド類にはTNF-aの産生を阻害する活性をもつものが多くあります。

このページのトップへ