冬虫夏草 (とうちゅうかそう, Cordyceps sinensis)

【基原】

ガの幼虫に生えたキノコの一種。このキノコはバッカクキン科の菌類で、とくにコウモリガ科の昆虫の幼虫に寄生する。養分を昆虫などから得て寄生生活をし、とりついた昆虫などの体内で、菌糸の固まりである菌核をかたちづくり、やがて虫の体を突き破って、キノコ(子実体)を生じる。学名はCordyceps sinensisという。

【薬能・薬理作用】

○性味は甘・温。滋養強壮作用があり、実験的にも抗ガン作用が証明されている。

○気管支を拡張する作用があり喘息を止める作用がある。鎮静・催眠作用あり。

○性質が穏やかで常食するとよい。しかし高価である。 

 [常用量/日]3ー15g (保険適用外)

日本では、シュツットガルトの世界陸上大会での中国女子中距離選手(いわゆる「馬軍団」)の大活躍がきっかけに話題となり、冬虫夏草の驚くべき効果が広く一般に知られるようになった。

免疫力を高め、造血作用や血流改善作用によって体力を増強し、疲労回復の促進などの効果が知られている。動物実験などで、ガンの転移予防や増殖抑制などの抗腫瘍活性も報告されている。(文献参照)

【文献】

ラットに冬虫夏草の水エキスを、体重1kgあたり200mg服用させるとクッパ‐細胞(肝臓にいるマクロファージの一種)の貪食能を高めることや、肺ガン細胞やメラノーマ細胞を植え付けたマウスの実験でガン細胞の肝臓への転移を抑制することなどの結果が報告されている。

Activation of in vivo Kupffer cell function by oral administration of Cordyceps sinensis in rats.(Nakamura K, Yamaguchi Y, Kagota S, Shinozuka K, Kunitomo M.)Jpn J Pharmacol 1999 Apr;79(4):505-8

Inhibitory effect of Cordyceps sinensis on spontaneous liver metastasis of Lewis lung carcinoma and B16 melanoma cells in syngeneic mice.
(Nakamura K, Yamaguchi Y, Kagota S, Kwon YM, Shinozuka K, Kunitomo M.)
Jpn J Pharmacol 1999 Mar;79(3):335-41

冬虫夏草のメタノールエキスから抗腫瘍活性を持つ成分として、 5 α,8 α-epidioxy-24(R)-methylcholesta-6,22-dien-3 β-D-glucopyranoside 、5,6-epoxy-24(R)-methylcholesta-7,22-dien-3 β-ol 、ergosteryl-3-O-β-D-glucopyranoside、 22-dihydroergosteryl-3-O-β-D-glucopyranoside が見つかっている。

Antitumor sterols from the mycelia of Cordyceps sinensis.
(Bok JW, Lermer L, Chilton J, Klingeman HG, Towers GH.)
Phytochemistry 1999 Aug;51(7):891-8
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