がんの統合医療における問題点:なぜ日本で統合医療が広まらないのか

西洋医学中心のがん治療の中で漢方治療やその他の代替医療を受けたくても、何をしたら良いのか、どこへ行ったら良いかを指導してくれる医者は極めて少ないのが現状です。漢方薬は日本では保険診療で使用が認められているのですが、医療現場では西洋医学を補う代替・補完医療と捉える医者が大多数です。

注:漢方薬は欧米では代替医療の中に含まれますが、日本では医者が保険を使って使えるから代替医療には含めない意見もあります。

医者、患者、代替医療の観点から統合医療の問題点を整理し、なぜ日本で統合医療が広まらないのか考察したいと思います。

1.医者の立場から、代替医療を安易に診療に取り入れられない理由がある。

・有効性のエビデンス(ほんとうに効くのか)や作用メカニズム(なぜ効くのか)が不明なもの が多い。
・漢方薬以外は保険が使えない(保険診療と自費診療の併用が現在の医療制度ではできない)
・通常医療(現代西洋医学)と代替医療を組み合わせた場合の客観的なデータが乏しい。
・西洋薬と漢方薬や健康食品などとの相互作用が十分検討されていない。
・学校で学んでいない。(知らない)

情報がはっきりしないから、「健康食品は飲まなくて良い」という医者の言葉も、間違いではありません。はっきりした情報がないから、医者の責任で助言できるのは限界があり、効果や有害作用について責任が持てないという理由で、医者が統合医療に消極的になるのは仕方がない事です。

2.保険診療では、医師は代替医療について助言してもメリットがない。

「保険医療機関及び保険医療養担当規則」の第19条に、「保険医は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、叉は処方してはいけない」という規則が定められています。治験用に用いる場合に限って例外は認められていますが、基本的に、保険医療機関や保険医が未認可医薬品やサプリメントを患者に使用することは禁じられているのです。これは、保険診療に自由診療の治療を組み合わせる「混合診療」が禁じられている事とも関連します。

したがって、保険医と保険診療機関にとって、患者さんに補完・代替医療について説明することは全くメリットがありません。したがって、標準治療を受けている主治医から補完・代替医療に関して説明したり紹介することはありません。
つまり、がん患者さんは、主治医から補完・代替療法に関する情報を得ることはありません。
日本の国民皆保険制度が、がん患者さんを補完・代替療法へのアクセスを妨げる重要な要因となっていると思います。

3.代替医療の信頼性に問題がある。

・多くの健康食品が無規制で販売されている。
・代替療法には医師や鍼灸師のような資格や認可制度がないため、開業している療法士の信頼性や能力が一般人には判断しにくい。
・健康食品が西洋薬の副作用を強めたり、代替療法を行って病気を悪くすることもある。

代替医療は病気を診断する能力は低いので、代替医療に固執して手遅れになったり、間違った治療法によって病気を悪化させるなどの問題もあり、代替医療によるトラブルも絶えません。治療の長所ばかりが宣伝されて、マイナス面が隠される傾向にあるなど、情報の開示に関しては改善すべき点が多々あります。

4.患者が自分に合った医療を自分で選択するには限界がある。

・病気の種類や患者の状態によって適する統合医療は異なる。
・口コミや宣伝など偏った情報に依存しなければならない。
・体にいいといわれる治療はどんな病気にも良いと思ってしまう。 
・情報は氾濫しているが、断片的な情報では、最良の選択は無理。
・医学知識が乏しい一般人には良し悪しが判断できないから、セカンドオピニオンやインフォームドコンセントが必要。

以上の問題を解決するためには、病院の治療だけに頼るのではなく自分で良い治療法を探すための情報の収集、統合医療を相談できる場所、患者と医療従事者の間のネットワークづくりが必要と思います。

◯ がんの漢方治療や補完・代替療法に関するご質問やお問い合わせはメール(info@f-gtc.or.jp)でご連絡下さい。全て院長の福田一典がお答えしています。

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