n-3不飽和脂肪酸と抗酸化剤の併用は抗がん剤の治療効果を高める。
Dietary Polyunsaturated Fatty Acids: Impact on Cancer Chemotherapy and Radiation
(食事由来の不飽和脂肪酸:癌化学療法と放射線療法に対する影響)
Kenneth A. Conklin, MD, PhD . Altern Med Rev 2002;7(1):4-21

要旨:

ある種の不飽和脂肪酸がいくつかの抗がん剤や放射線のの抗腫瘍活性を増強する可能性が、動物実験などで示されている。おそらくこれらの効果は、細胞膜に不飽和脂肪酸に取り込まれ、細胞膜の生理的あるいは機能的な性質を変えることによって引き起こされると考えられる。

さらに、ある種の不飽和脂肪酸は、これらの治療の副作用を軽減したり予防する可能性があり、そして、不飽和脂肪酸によって引き起こされる酸化ストレスを防ぐために抗酸化剤を投与することは、抗がん剤や放射線治療の効果をさらに増強する可能性がある。

(以下、本文の抜粋のみ)

【活性酸素種(Reactive Oxygen Species, ROS)を介したメカニズムの解釈】

不飽和脂肪酸自体ががん細胞の増殖や活性に影響するので、化学療法や放射線療法に及ぼす不飽和脂肪酸の影響を解析するのは困難である。不飽和脂肪酸は、peroxyl ラジカルや alkoxyl ラジカルのような脂質過酸化物を発生して、細胞に対して酸化ストレスを引き起こす。これらの脂質過酸化物はすぐ分解するが、その分解産物
(malondialdehyde や 4-hydroxyalkenalsのようなアルデヒド)は長い時間存在して細胞の様々なターゲットに作用する。

これらのアルデヒドは低濃度において、細胞増殖を抑制する方向で細胞周期に影響する。その作用として、細胞周期のG0からG1への移行を阻害したり、G1期を延長させたり、DNAポリメラーゼの活性を阻害してDNA合成を阻害したり、などが報告されている。したがって、このような細胞増殖を抑えるような作用は、がん細胞や骨髄細胞や消化管粘膜細胞のような増殖の早い細胞に影響する。

不飽和脂肪酸によって引き起こされる酸化ストレスは、低いレベルでは細胞増殖を阻害し、より高いレベルではアポトーシスを誘導し、さらに高いレベルでは壊死(ネクローシス)を引き起こす。

多くの研究により以下のようなことが明らかになっている。

1)linoleic acid (LA), gamma-linolenic acid (GLA), dihommogamma-linolenic acid (DGLA), arachidonic acid (AA), alpha-linolenic acid (ALA), eicosapentaenoic acid (EPA), docosahexaenoic acid (DHA)のようなオメガ-6 (n-6) あるいは オメガ-3 (n-3)の不飽和脂肪酸は、培養細胞を用いた実験で、がん細胞の増殖を止める作用をする。

2)この作用は、脂質過酸化物やアルデヒドの産生が関係している。

3)不飽和脂肪酸の細胞毒性は抗酸化物質により弱められる。

4)動物実験にて、魚油の酸化脂肪酸を含む食餌が、がん組織の増殖を抑え、その作用は抗酸化物質の投与によって弱められる。

しかし、培養細胞を用いた実験で観察された作用は、多くの場合30マイクロM以上の高濃度で実験されており、この濃度は正常の血中脂質濃度の範囲を超えている。細胞培養の実験では、培養液のアルブミンや抗酸化物質が少ないなどの理由で、生体内より脂質は容易に酸化物に変化しやすいという理由がある。不飽和脂肪酸による細胞増殖抑制効果は必ずしも脂質酸化の程度と相関していないとか、その増殖抑制効果は抗酸化物質によって完全には阻害されない、という報告もある。

マウスにおける大腸がん細胞の増殖に対する魚油の抑制効果は、抗酸化物質の投与がなくても、リノール酸の投与で阻害される、という報告がある。さらに、ヒトの乳がん細胞や前立腺がん細胞をヌードマウスに植え付けた実験で、魚油はがんの増殖や転移を抑制するが、この抗腫瘍活性は抗酸化物質を投与しても完全には阻害されないことが報告されている。つまり、これらの研究結果は、不飽和脂肪酸の抗腫瘍効果は酸化ストレスの他にも、がん細胞の増殖を抑えるメカニズムが存在することを示唆している。

【活性酸素種を介さないメカニズムの解釈】

酸化ストレスを介さないメカニズムの一つとしてエイコサノイド産生に対する影響がある。アラキドン酸に由来するエイコサノイドががん細胞の増殖や転移のプロセスで重要な役目を果たしている。
アラキドン酸由来のエイコサノイドの産生を高めるリノール酸を食餌に加えると、がん細胞の増殖や転移や血管新生を促進することが、多くの動物実験で示されている。これは、アラキドン酸由来のエイコサノイドが、増殖因子やがん遺伝子やプロテインキナーゼなどと相互作用するメカニズムが関与している。
EPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)のようなn-3不飽和脂肪酸の投与は、アラキドン酸由来のエイコサノイドの産生に影響して、がん細胞の増殖プロセスを阻害する。
一般に、がん細胞の増殖はアラキドン酸由来のエイコサノイドによって促進され、EPAやDHAのようなn-3長鎖不飽和脂肪酸によって抑制される。

さらに、EPAやDHAやGLA(ガンマリノレン酸)が細胞膜の脂質に取り込まれると、細胞膜の性情が変化して、増殖因子受容体や接着因子の機能に影響したり、細胞周期やアポトーシスの過程に影響して、がん細胞の増殖が抑えられる。このように、EPAやDHAやGLAは、アラキドン酸由来のエイコサノイドの産生を抑制するだけでなく、細胞膜の機能にも影響して、がん細胞の増殖を抑制する。

さらに、魚油に含まれるn-3不飽和脂肪酸は、がんの悪液質を改善して延命効果があることが、動物実験やヒトの臨床研究で明らかになっている。この作用は、n-3不飽和脂肪酸が炎症性サイトカインの産生を抑制したり、急性期反応蛋白の合成に影響することと関連している。魚油が、栄養が不良な進行がんの患者の免疫力を高めることも報告されている。このように、化学療法や放射線療法中にEPAやDHAを補充することは、がんの進展や治療に悪影響を及ぼさないで、生存期間を延ばすことが期待できる。

複雑なメカニズムが作用するため、解釈が困難ではあるが、多くの研究データが、ある種の不飽和脂肪酸は、がん細胞の増殖を直接抑制するだけでなく、抗がん剤や放射線療法の効果を高めることを示している。

【In Vitro 研究】

動物やヒトの培養がん細胞を用いた研究では、その実験方法により注意が必要。通常2通りの実験方法がある。
ひとつは、培養細胞に抗がん剤と不飽和脂肪酸を同時に添加するものであり、もう一つは、不飽和脂肪酸を添加した培養液に1〜2日間前培養したあとに、不飽和脂肪酸の入っていない培養液に抗がん剤を添加する方法である。

前者の方法では、抗がん剤そのものが酸化剤として働いて、不飽和脂肪酸の酸化を促進して、細胞毒性のある過酸化脂質の産生を促進し、不飽和脂肪酸の抗腫瘍活性を高めるので、間違った結果を出しやすい。
生体内で酸化ストレスを引き起こして脂質の過酸化を促進する抗がん剤として、
多くのアントラサイクリン系抗がん剤(doxorubicin, epirubicin, and idarubicin, but not mitoxantrone), epipodophyllotoxins (etoposide and teniposide), カンプトテシン系抗がん剤(topotecan and irinotecan), 白金複合体 (cisplatin and carboplatin), ブレオマイシン, ある種のアルキル化剤が含まれる。
これらの抗がん剤の抗腫瘍効果は、酸化ストレスだけではないが、不飽和脂肪酸を同時に培養液に添加すると、不飽和脂肪酸の産生によって酸化ストレスを高めて、抗腫瘍活性を増強する。

それに反して、後者の方法はより生体内での反応を反映する。不飽和脂肪酸を添加した培養液で24〜48時間培養すると、がん細胞にこれらの不飽和脂肪酸がとりこまれる。この条件で抗がん剤に対する感受性の変化を検討すると、不飽和脂肪酸と抗がん剤の直接の相互作用(酸化ストレスの増強)以外の抗腫瘍効果のメカニズムを反映することになる。

以下は要点のみをまとめている。(不飽和脂肪酸と抗がん剤を同時投与している多くのin vitro実験では、不飽和脂肪酸の過酸化が細胞毒性を示すことと関連しているが、このような研究で使われている濃度は高く、生体内での作用とかけはなれている。したがって、この手の研究結果は重視しないほうが良いかもしれない。以下のまとめには、この点を考慮して一部の研究結果は略している)[[・ネ[閏コ[・ヘ[ーA[措ス[・ュ[・フ[票カ[啓」[・フ[充ミ[閏w・ヘ[夕ェ[・オ[・

【アントラサイクリン系抗がん剤との関係】

培養細胞を用いた実験で、ドキソルビシンの抗腫瘍効果はγリノレン酸やDHAの添加により増強される。この作用は抗酸化剤の併用で増強される。したがって、これらのn-3不飽和脂肪酸ががん細胞の膜に取り込まれてドキソルビシンに対する感受性が高まるためと考えられ、酸化ストレスとは関連しない。

ドキソルビシンやエピルビシンは細胞の核やミトコンドリアに多く取り込まれて、そこにあるDNAに作用して抗腫瘍効果を発揮する。これらの抗がん剤に抵抗性のがん細胞は、核やミトコンドリアへの抗がん剤の取り込みが低下している。ガンマリノレン酸の投与は、ドキソルビシンの核内への取り込みを促進して抗腫瘍活性を高めることが報告されている。このように、不飽和脂肪酸が膜に多く取り込まれると、抗がん剤の細胞内への取り込みを高めて抗腫瘍効果を高めることが多く報告されている。

その機序として、不飽和脂肪酸が細胞膜に取り込まれると、膜の流動性が高まって、抗がん剤の取り込みが促進することが示唆されている。細胞膜の不飽和脂肪酸の量を増して細胞膜の流動性を高めることは、抗がん剤の感受性を高める一つの機序と考えられる。

マウスの動物実験において、食餌に10%の魚油(17% EPA, 11% DHA) を添加した場合と、10%のコーン油 (60% LA, 30% oleic acid (OA), <1% ALA)を添加した場合で比較すると、魚油を添加した方が、ドキソルビシン投与による抗腫瘍活性が強く現れた。同様の実験結果は他にもあり、一般に魚油を補充した食餌はドキソルビシンの抗腫瘍効果を増強することが報告されている。この場合、脂肪酸の酸化を防ぐような処理がなされている。

酸化作用のある鉄を添加しても、魚油を補充した食餌によるドキソルビシンの抗腫瘍効果増強作用は影響を受けなかった。つまり、魚油によるドキソルビシンの抗腫瘍活性の増強は酸化ストレスの増大とは関連しないと考えられる。

悪性リンパ腫の犬を用いた実験で、魚油とビタミンEとアルギニンを添加した食餌はドキソルビシン治療後の生存期間を延長させた。この作用は、ドキソルビシンの抗腫瘍効果の増強に加えて、生体機能を改善したり、炎症性サイトカインの産生抑制などによりがんの悪液質を改善する効果も示唆されている。

【シスプラチン】

シスプラチンに抵抗性のがん細胞(小細胞肺がんや卵巣がんなど)において、細胞膜のDHAやEPAやGLAの量を増やす(これらのn-3不飽和脂肪酸を添加した培養液で培養)と、シスプラチンに対する感受性が高まった。シスプラチンに感受性のあるがん細胞には、細胞毒性は影響しなかった。この実験において、シスプラチンとDNAの相互作用が高まっていた(シスプラチンが多くDNAと結合していた)。したがって、不飽和脂肪酸はシスプラチン抵抗性のがん細胞において、シスプラチンの効き目を高める効果がある。

ルイス肺がんを植え付けたマウスを用いた実験で、魚油を添加した食餌を与えたマウスでは、シスプラチンの治療効果は増強し、腫瘍増殖や転移の抑制が顕著であった。この実験で、ビタミンCとE」の補充は、さらにシスプラチンの抗腫瘍効果を増強した。これらの結果は、シスプラチンの抗腫瘍効果や、魚油による効果増強作用には、フリーラジカル発生による酸化ストレスの関与は少ないと考えられる。

【アルキル化剤】

マイトマイシンCは活性酸素種を発生させるので、培養細胞を用いた実験における不飽和脂肪酸とマイトマイシンの相乗効果は、過酸化脂質の毒性が関連している。(前記の理由でこの作用は生体内では考えにくい)
白血病細胞を用いた研究では、細胞膜の脂質の不飽和脂肪酸の量を増やしても、マイトマイシンの取り込みを高める効果は認めなかった。つまり、マイトマイシンに関しては、不飽和脂肪酸の投与が効果を生体内で増強することを示す証拠は乏しい。しかし、幾つかの動物実験で、不飽和脂肪酸の食餌への添加が、マイトマイシンの抗腫瘍効果を高めることが報告されている。

生体内での活性化を必要とするアルキル化剤のサイクロフォスファミドの抗腫瘍効果は、魚油を添加した食餌によって増強された。その機序として、魚油が肝臓や腫瘍内の薬物代謝酵素であるP450の活性を高めて、サイクロフォスファミドの活性化を促進するためであると考えられている。さらに、担がんマウスの体重減少や抗がん剤の副作用は、魚油の投与により軽減された。その機序として、肝臓のアルデヒド脱水素酵素の活性を高めて、サイクロフォスファミドの毒性代謝産物であるアクロレイン(acrolein)の解毒を促進することが考えられている。

【エトポシド】

不飽和脂肪酸との関係に関する十分なデータはない。

【ビンカアルカロイド】

不飽和脂肪酸とビンクリスチンなどのビンカアルカロイドの同時投与により、培養がん細胞に対する抗腫瘍活性が高まることが報告されているが、これらの実験は、不飽和脂肪酸単独でも抗腫瘍効果を示す濃度で検討されており、生体内での効果を予測することはできない。GLA, EPA, DHAによってビンカアルカロイドの取り込みが高まることが報告されているが、実験で使用されている濃度が高く、確定的な解釈はできない。

【メソトレキセート】

細胞膜の流動性が高まることによって、薬剤の細胞内への取り込みが促進される可能性が報告されている。

【プリンとピリミジン誘導体】

EPA や DHA は cytosine arabinoside, 2-chloro-2'-deoxyadenosine, 5-fluorodeoxyuridine, 7-deazaadenosinedの抗腫瘍効果を高めなかった。

ラットを用いた実験で、n-3不飽和脂肪酸はサイトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)の抗腫瘍効果を増強しなかったが、副作用である骨髄抑制や消化管粘膜障害を予防する効果が認められた。DHAはytosine arabinosideの抗腫瘍効果に影響しないが、副作用を予防する効果がある。この場合、使用する不飽和脂肪酸は酸化されない状態にしておかなければならない。もし過酸化されやすい状態では、逆に酸化ストレスを増強して、骨髄細胞や消化管粘膜細胞にダメージを与えるからである。

【イリノテカン】

イリノテカンはDNAトポイソメラーゼIの阻害剤であり、魚油の投与により抗腫瘍が高まる。この抗がん剤は消化管粘膜細胞を障害して下痢を起こす副作用があるが、魚油を添加した食餌でその副作用は軽減させることができる。n-3不飽和脂肪酸は、イリノテカンの抗腫瘍効果を高め、副作用を予防すると言える。

【ブレオマイシン】

ブレオマイシンは肺の線維化を引き起こす副作用がある。γリノレン酸などのn-3不飽和脂肪酸がブレオマイシンの肺線維化を予防する効果があることが報告されている。この効果はn-3不飽和脂肪酸が炎症性のエイコサノイドの産生を抑えることと関連しているかもしれない。

【放射線】

放射線照射中に培養液に不飽和脂肪酸を添加しておくと、一般的に放射線の殺細胞効果は高まる。
照射前に不飽和脂肪酸を添加して細胞膜の不飽和脂肪酸の量を増やしても、放射線照射の効果はあまり増強しない。しかしながら、がん細胞の細胞膜の不飽和脂肪酸を多くすることによって、放射線に対する感受性を高める結果も報告されている。がん細胞の種類や実験条件によって異なる結果が報告されている。

【ヒトでの臨床研究】

Baronzio らは、1日 5-7 gのn-3不飽和脂肪酸と2-3 gの抗酸化剤(ビタミンE,Cなど)を併用して投与すると、抗がん剤や放射線による治療効果を高めることを報告している。抗酸化剤自身が、抗がん剤の治療効果を高めることが知られているので、n-3不飽和脂肪酸の効果がどの程度あるかは判断が難しい。
乳がん患者での研究で、乳腺の脂肪組織のn-3不飽和脂肪酸の量(特にDHA)が多い患者ほど、抗がん剤の効果が高かった、という報告がある。

【不飽和脂肪酸、酸化ストレス、がん治療】

不飽和脂肪酸を抗酸化剤と一緒に投与しないと、酸化ストレスの原因になる可能性がある。がん細胞に酸化ストレスが加わると、がん細胞の増殖速度が遅くなって、抗がん剤や放射線の抗腫瘍効果が弱められる可能性がある。それは、抗がん剤や放射線が増殖している細胞に効果を発揮するからである。

たとえば、DNA合成期に作用する抗がん剤(DNA合成阻害剤やトポイソメラーゼ阻害剤)や細胞分裂の時に作用する抗がん剤(細胞分裂阻害剤)は、がん細胞の増殖が止まると効き目が無くなる。酸化ストレスは抗がん剤によるアポトーシスを阻害する結果、抗がん剤の効き目を弱める可能性がある。したがって、抗酸化剤とn-3不飽和脂肪酸を併用することは、抗がん剤治療の効果を高めることになる。

同様に、放射線治療中にn-3不飽和脂肪酸を投与することは、治療効果を高めて副作用を予防する効果が期待できる。抗酸化剤については議論があるが、一般的に抗酸化剤の併用は放射線治療に有益であると考えられている。

Commentary

エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)やガンマリノレン酸(GLA)を含むサプリメントはがん治療の効果を高める一つの手段となる。細胞膜のn-3不飽和脂肪酸の量を増すことは、がん細胞の膜の生理的あるいは機能的な性状を変化させて、抗がん剤や放射線に対する感受性を高め、また抗がん剤に対する抵抗性を改善する効果がある。

がん治療の効果を高めることを示す臨床研究はまだ乏しいが、動物実験などの研究から、n-3不飽和脂肪酸の投与はがん治療に有用であることが示唆されている。ヒトでの効果を確かめる臨床研究が今後必要である。
n-3不飽和脂肪酸の投与は抗がん剤や放射線の抗腫瘍効果を高めるが、不飽和脂肪酸の酸化により発生するアルデヒドは、がん細胞の増殖を止めて、これらの治療効果を弱める可能性がある。
抗酸化剤の投与は、アルデヒドの発生を抑えて、抗がん剤や放射線治療中の不飽和脂肪酸の抗腫瘍効果を増強する可能性がある。実際、魚油と抗酸化剤の併用は、魚油単独の場合より、シスプラチンの抗腫瘍効果を高めることが報告されている。

動物実験などでは、抗酸化剤は種々の抗がん剤の効果を高めることが多く報告されているが、臨床研究がすくないので、抗酸化剤の有用性についてはまだ不明な点もある。これらの問題も含めて、がん治療における不飽和脂肪酸や抗酸化剤の役割についてさらに研究が必要である。